Top伝承ホ-ル寺子屋とは
 2010年11月、渋谷区に伝統芸能上演を目的とする待望の〔伝承ホール〕が誕生しました。その開場祝賀公演では、渋谷の土地を開拓した伝説的ヒーロー〔渋谷金王丸〕を題材にした「渋谷金王丸伝説」が、松本幸四郎(当時、市川染五郎)さん主演により、創作カブキ踊りというスタイルにて上演されました。そのフィナーレで、公募によって選ばれた区民78名が新曲「渋谷カブキ音頭」で幸四郎さんと大興奮の共演。盛況・喝采・感動・号泣……まさに渋谷区の文化事業に新たな一葉が加わった舞台であり、この区民の熱い気持ちを大事にしたいと、翌年から伝承ホールを拠点とした伝統芸能を総合的に学ぶ〔伝承ホール寺子屋〕が組織されました。コレガハジマリ

伝承ホール
2010年11月、渋谷区桜丘町の旧大和田小学校跡地にオープンした複合施設 「渋谷区文化総合センター大和田」に開設された定員345名のホール。伝統芸能から現代演劇、コンサートまで幅広い舞台芸術が行われている。

 応募資格は渋谷区在住・在勤・在学の方。小学校1年生から80歳を過ぎたシニアまで、毎年100人を超える塾生が一緒に伝統芸能を楽しく学ぶことになりました。他の自治体では児童とシニアを分けて学ばせる事業が主ですが、我が寺子屋では同じ課題を世代を超えて共に学ぶことに意義を見出しています。家族参加モ、オオイデス

様々な世代の塾生たち

 この寺子屋事業には三つの柱があります。一つは、開場公演以来〝吉例〟となっている松本幸四郎さん主演の「渋谷金王丸伝説」公演のフィナーレにおいて披露する「渋谷カブキ音頭」への出演です〔カブキ踊り体験プログラム〕。約三ヶ月の厳しい稽古を経た後、その成果を問う大舞台に立ちます。曲調は古典舞踊に較べればアップテンポですが、幸四郎さん振付の踊りはしっかりと日本の伝統的な所作に基づくものです。「カブキぼん!ダンス」もオドリマス

カブキ踊り実技稽古

 二つ目は〔伝統芸能プログラム〕として、主に練習室で実施している学習プログラム。日本を代表する講師陣から伝統芸能について贅沢な講義を受けます。多くの塾生が「カブキ音頭」出演を兼ねていますが、この学習プログラムに専念する方もいます。これまでに学んだジャンルをざっと列記してみれば、実技では能・狂言・歌舞伎・伝統音楽(義太夫・常磐津・清元・新内・長唄・鳴物・発声)・話芸(落語・講談)・パントマイム。美術では、舞台美術・衣裳デザイン・小物製作。座学は藝能史・芝居小屋・現代劇場・日本文化……等々。これはもう演劇学校のカリキュラムにも負けていません。いずれアーカイブ

古典の日公演「雅楽」

 上記の学習プログラムは塾生のみを対象としていますが、年に二、三回ほど一般の方も参加して頂ける〔公開講座〕も開催しています。これが三本目の柱です。この開催については単に著名人を呼んで満足という形ではなく、必ず〝寺子屋目線〟での独自プロデュースや演出を施し、その日ホールに足を運んだ人でしか為し得ない新発見をして頂きます。これまでに雅楽・能・狂言・文楽・歌舞伎・日本舞踊・寄席・漫才・万歳などの講座を開催しました。昨年度からは、この上演形式の公開講座に加え、座学講座も催し始めています。世間で文化芸術講座が激減している状況を憂い、我が寺子屋発信にて文化芸術を学ぶ必要性を再認識してもらう目的があります。初年度は「古典藝能の作家たち」というタイトルで、世阿弥・近松門左衛門・鶴屋南北を扱いました。竹本センセイ、古井戸センセイ、児玉センセイ

初春公開講座

 その他、講師陣からの依頼や必要に応じて、提携公演を行うこともあります。実績として歌舞伎公演・女流義太夫公演・日本パントマイム協会発足記念公演などがあります。

提携公演「つがじゅの会」

 我が寺子屋も発足から十年がたちましたが、どこにもないオンリーワンの文化事業を目指し、まだまだ試行錯誤の連続です。可能な限り前例や行政常識に囚われず、塾生一人一人の個性に応じた、柔軟で手作り感のあるチームを作りたいと思っています。そしてその環境作りは、すでにサポーターやボランティアの方々、経験者や保護者の皆さまの手により完成しつつあるのも我が寺子屋の自慢です。現在ご存知のような疫禍により、文化芸術は経験したことのない危機に陥りました。この状況は直ぐには収まらないかもしれませんが、伝承ホール寺子屋は新しいテクノロジーを便利使いしながら、あくまでも〝心と体が触れあえる〟道場であり続けたいと願っています。……というのが、〔伝承ホール寺子屋〕です。長くてスミマセンでした

修了式

伝承ホール寺子屋プロデューサー 鈴木英一

伝承ホール寺子屋プロデューサー。早稲田大学演劇博物館招聘研究員。聖学院大学、宇都宮大学講師。常磐津節浄瑠璃方。伝統藝能作家。当伝承ホールの自主事業「渋谷金王丸伝説」の作・プロデュースを務めている。「(かぶき体操)いざやカブかん!」「渋谷カブキ音頭」「カブキぼん!ダンス」の作者。

 

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