2021 / 09 / 04

伝統芸能プログラムレポート(2020年度)

★公開講座 「今こそ、心と体を創る学校」 演劇とパントマイムによる心身の鍛錬について
対象:寺子屋塾生(申込制)
7月29日 伝承ホール

講師:高泉淳子 
コロナ禍で今年の寺子屋がようやく開講、久しぶりの邂逅を喜ぶ塾生。シェークスピア作「ハムレット」のセリフをテキストに、言葉による表現を学ぶ。ともすれば大袈裟に演じることが表現と勘違いされるが、自分の言葉で自然体で丁寧に話すことが大切とのお話。最後は、いくつかのキャラクターに扮しての演技手本で会場を沸かせる。
講師:江ノ上陽一
劇作家サミュエル・ベケットの「言葉なき行為 II」を演じる二人のパントマイマーの映像を上映。雨中にビルの屋上で演じられる不条理劇は衝撃的。続けて、台本なしのぶっつけ本番で、パントマイム実践講座。チャレンジした塾生たちの驚きのパフォーマンスに拍手喝采。 しばしコロナ禍で鬱積していた気持ちを解放できた講座となった。

★初春公開講座 「古典藝能の名作」
対象:一般 ※緊急事態宣言発出のため講座は中止、収録を行う。(2021年古典の日公開講座にて上映予定)。

歌舞伎「寿曽我対面」
1月15日 学習室1

講師:古井戸秀夫
今回のテーマは鎌倉時代に実際にあった曽我兄弟の仇討ちを元にした江戸の歌舞伎「寿曽我対面」。江戸の初春に繰り返し上演された吉例の寿狂言。物語の内容、演じる役者、江戸の習俗、講師自身の絶妙な語り口が一体となって、史実と芝居が混然となる。
人形浄瑠璃「国性爺合戦」
1月22日 学習室1

講師:児玉竜一
日本と明国のハーフ和藤内が活躍するスケールの大きな作品。作者、近松門左衛門の文学表現は現実の舞台の大きさを超えるもので、眼から鱗のエピソードなど盛り沢山。科白を読む講師の語り口は役者そのもの、まるで芝居を見るような魅力的な講座。
能「高砂」「清経」「野宮」「三井寺」「鞍馬天狗」

講師:竹本幹夫
能の主役は神・男・女・狂・鬼に大別される。それぞれジャンルの名作の魅力を、講師作成のパワーポイントにて贅沢な解説。これも後日、一般に上映公開予定。

★学習プログラム 「やしょめ寄席学プロ版」
対象:寺子屋塾生 ※緊急事態宣言発出のため、リアル講座は中止、収録を行う。(オンラインにて2/7~3月末まで開催)。視聴後の感想文を募集。
1月17日 大練習室

講師:林家なな子
演目はお馴染みの「てんしき」。オナラをテーマにした小坊主と和尚の珍妙なやりとりにリアル講座なら、さぞ大笑いだったに違いない。最後に南京玉簾を披露。
講師:春風亭ぴっかり☆
はじめに、主人と使用人のコミカルなやりとりがおかしい小噺「みそ豆」。続いて、配信を考慮しての「動物園」。落語では動物の動作などは誰も教えてくれないので本物を見て研究したそうで、ライオンの演技はお見事。
講師:林家つる子
演目は「反対俥」。障害物を飛び越えて走る人力車のシーンでは何度も座布団の上を跳び跳ねる力技。さらに「鬼滅の刃」のエピソードを散りばめ、体を乗り出し、カメラの視界からはみ出しそうな勢いで塾生に呼びかける熱演。
講師:柳亭こみち
演目は「そば清」、「妻の酒」、そしてコロナとの縁切りを願って「縁切榎」の三題。 さらに、芸者の一日を歌った端歌「梅にも春」に合わせて踊る当振を披露。コロナ禍で苦しむ人々へ「落語は人の心を元気にするエンターテイメントです」と力強いエールが送られた。
いずれも寄席社会において少数精鋭で奮闘する女性芸人の魅力をたっぷりと味わう講座となった。

 
オンライン版「やしょめ寄席」塾生感想文紹介
2020年度は、コロナ禍により毎年恒例の「やしょめ寄席」を伝承ホールで開催することが出来ませんでしたが、オンライン講座を実施し、自宅で落語を楽しんで貰いました。いつでも、どこでも、何回でも楽しめる。オンラインには利点もありますね。寺子屋塾生も大いに笑い、多くを学んだようです。その感想が寄せられましたので、いくつか抜粋して紹介したいと思います。

【ジュニアクラス】

●きょう、かぞくと「やしょめよせ」をみたよ。「てんしき」はおならのことなのに、われちゃったとか、たべちゃったっていうのがわかんなくて、おもしろかったよ。(小学1年女子)

●ぼくは、林やさんのらくごのせつめいをきいて、らくごは、せん子と、きものと、ざぶとんだけでいろいろなせかいのひょうげんができるのがおもしろかったです。おそばをたべるものまねは、ぼくもまねしてみたりしています。(小学1年男子)

●わたしは、このどう画を見るずっと前に、CDで「てんしき」のらくごを聞いたことがありました。その時は、こうか音をどうやって出しているのか分からず、お話を聞いているだけでした。今回、らくごかさんたちが使う道具を教えていただき、みぶりてぶりを交じえたらくごを聞いてCDとはぜんぜんちがうなと思いました。らくごかさんたちがとうじょう人物によって体のむきをかえたり、声をかえたり、道具を使ってやくになりきったりするので、耳だけで聞くCDよりもお話がすんなり頭に入りました。わたしのお気に入りの場面は、ちんねんがおしょうさんのおつかいに出るところです。なぜなら、ざぶとんの上にいながら、本当に歩いているようにひょうげんされているからです。早くコロナがしゅうそくして、生でらくごを聞ける日がまちどおしいです。(小学2年女子)

●「てんしき」がおならのことは知ってたけれど面白かったです。「てんしき」の落語もおしょうさんがごまかす所が面白かったです。落語というのは扇子と手ぬぐいだけで色々なものを表すのはすごく大変だと思います。落語家の、はやしやななこさんはすごくれんしゅうしたとおもいます。「南京玉すだれ」が一番すごいと思います。南京玉すだれだけで釣竿やとりいができるなんてすごいと思います。何か仕組みがありそうです。あとは、ざぶとんと、クッションの違いがあるなんてびっくりしました。クッションとざぶとんはほとんど同じだと思いました。(小学3年女子)

※保護者の感想……娘と一緒に楽しく拝見しました。私自身は寄席は何度か体験したことがありますが、改めて落語家さんの鍛えあげられたお声の素晴らしさに感激しました。また芸者の一日の当振が素晴らしかったです。娘は「てんしき」の意味は以前テレビで見たとかで知っていたようでしたが、落語家さんの絶妙な間合いや軽妙な語り口にゲラゲラと笑いながら見ていました。

●わたしは、人前で話すことが苦手です。人前ですらすらしゃべれてすごいなと思いました。林家ななこさんのそばのすすりかたやそばの食べるえんぎをやってみたら楽しかったです。でも口に何もいれないですするのは、むずかしかったです。お水を少し口に入れるとすする音が出せてふしぎでした。お母さんもざぶとんとクッションとのちがいを知らなかったからべんきょうになったとよろこんでいました。楽しいお話をありがとうございました。(小学3年女子)

●私は落語を聞くことは好きだけど、人前で落語をするのは緊張してしまうので、落語家の方は凄いなと思いました。それとお蕎麦をすする場面や巻き舌の所が特に凄いと思い、よくスラスラ話をしていて、私も将来こういう方々になれたらいいなと思いました。(小学5年女子)

●こみち先生のさいごのところの、人の目を見て話すことは大切。のところが心にのこりました。落語も人の目をみてしているんだなーとおもった。/ななこ先生の「てんしき」は、最後におしょうさんがだまされたところがおもしろかったです。/つるこ先生の「はんたいぐるま」は、ジャンプをして、おっとっと・・となるところがおもしろかったです。(小学5年男子)

●私はジュニアですが、シニアの落語も見させていただきました。オンラインで得をした気分です。「そば清」が一番おもしろかったです。そばを食べている時の音が本当にそばを食べているみたいで私もお腹がすいてしまいました。おもしろくて私もそばをすする練習をしてみました。二つ目のオチの「そばの精」はすごく声がかわいかったです。また、「てんしき」もおもしろかったです。私はNHKの「落語theムービー」という番組で前に見たことがあったのですが、話し方が上手だったので、とても楽しめました。前から落語は好きでしたが、これからももっと落語を聞きたいです。(小学5年女子)

●一番面白かったのは、「反対俥」です。鬼滅の刃とかの、面白い所がたくさんあって見ていて楽しかったです。また、「南京玉すだれ」もすごかったです。特に最後の打ち上げ花火はとっても綺麗ですごかったっです。「そばの清」は、昔話がたくさん載っている本で、「とろかし草」という題名で読んだことがあったけど、落ち2では、そばの精が出てきてとっても面白いと思いました。(小学5年女子)

●話し方と身振り手振りだけで一つの話を表現できる落語はすごいなと思いました。「反対俥」では扇子を魚に見立てたり、蕎麦を食べる様子を扇子を箸に見立てたり、扇子と座布団だけであそこまで話を面白くできる落語家の方をとてもすごいと思いました。(中学1年女子)

【シニアクラス】

●こみち師匠の動画「縁切榎」を見て、なんともいえない不思議を感じました。……男性・女性とは?演者にとって、異性とは?。例えば春風亭一之輔が噺の中で女房になるとき、彼にとっての異性を感じます。これは、おそらく通念としてではないのか?。「この落語家は男で、今、女を演じている」という回路が頭の中にすでにあるのでは?と自分を疑いました。
 芸者と娘はこみちにとっては同性、主人公の男は異性。この決め事を感じない不思議。
どちらの性でも演じていることには変わりはないのですが、極端に言えば、芸者と娘の方にむしろ「異」を感じたのです。演者自身が消えてゆくことの究極、落語に限ったことではないと思います。おおげさなことばですが、演じることの始源、それをあらためて考えさせられました。
 未来に向かって、彼女たちを女性落語家ではなく、落語家と呼びましょう。(伝統芸能プログラム男性)

●林家つる子師匠は一昨年BSでの座布団芸人選手権での好演を目にして以来談志師匠の女版再来かと期待し追っかけを自負していますので楽しく拝見させて頂きました。つる子師匠の座布団の上を飛び跳ね後ろ向きも厭わないヤル気にはエネルギーを貰えた気がしますしあの変幻自在の表情の変化は大竹しのぶさんの愛の讃歌を彷彿とさせる物があり久々の期待の新人では無いかと期待しています。(四年目男性)

●寸評抜粋
・シニア<ぴっかり☆さん> 
 「味噌豆」。現在の状況では直接みることは困難な演目を配信で見られてうれしい。でも実際に生で拝見したらきっともっと楽しいはずだ。彼女に限らず、ほかの演目も。来年の秋にはワクチンも行き渡り、もう少し自由に公演ができたらと願っている。
 「動物園」。ぶらぶらしているだけと言っても、6時間ぶっ続けでライオンを演じることはかなり体力と根性が必要な職業だと思った。……ライオンの歩き方を真似しようとしたが、なかなか難しかった。

・シニア<こみち師匠> 「妻の酒」「縁切榎」+当て振り
 「妻の酒」。いつもはできない大人向けのネタをということでなにが出てくるかと思ったら、お酒と芸者さんの噺だった。泣き上戸にからみ酒、うざったい限りのおかみさんの沢の鶴。タチが悪いなと思っていたら、オチになるほどと納得させられた。
「縁切榎」。こみち師匠の幅の広さは知っていたはずだが、改めてそのすごさを実感した。男ってバカよねという感想を書こうとしたところで、この発言はよろしくないと気づく。この優男が悪いだけだ。渋谷に関係する者として、言動には気をつけたい。
「当て振り」はこの2月の梅の時季だけのもの。かわいらしい端唄の歌詞に芸者の一日をあわせる。せっかく動画になっているので歌いながら真似ようとしたが、コツがつかめずとてもむずかしい。
こみち師匠とのトーク、このご時世の辛さにダメージを受ける一方だけではなく、力をためて未来に備える姿勢がまぶしい。

・ジュニア(1)<なな子さん>
 まずは落語の小道具から。お扇子を筆に、大盃に、手ぬぐいを本にという見立てをクイズ形式で。つづいて、おそばをたぐってすする所作。どんぶりの持ち方を器の構造からわかりやすく紹介。そして座布団。クッションとは構造が違う。座布団は縫い目がない部分(輪)があり、縁の切れ目がありませんようにと願い、正面に置く。近年のやしょめ寄席では高座返しやお土産配りをジュニアさんたちが担当していたが、あれはシニア側からもジュニアの成長がわかるし、ジュニア側からも喜ばれて自己肯定感が上がるので、とてもよい取り組みだと思っている。もし来年やしょめ寄席ができたらジュニアさんたちにもまたがんばっていただきたい。「てんしき」は知っているお話だったが、老若男女に通じる鉄板噺に違いなし。去年ジュニア塾生が披露したときも、爆笑をかっさらっていた。

・ジュニア(2)<つるちゃん>
 冒頭の熱量にちょっと引いてしまったが、ぐいぐいと引きずりこまれた。落語を演じるための”上下(かみしも)を切る”ときに、お客さまから見やすいさじ加減がわかりやすかった。「反対俥」は、鬼滅やらあおり運転やら時事ネタがたくさん盛り込まれていて、子どもたちはきっと画面の前で引き込まれていたことだろう。

・ジュニア(3)<こみち師匠>
なな子さんがおそばの食べ方にふれた後でのそばネタだったので、きっと子どもたちは夢中になったことだろう。結末をふたつ話していただけたことがやさしい。顔と顔をあわせて目を見て話すことが大切との締めの話が、子どもたちに伝わりますように。
(以上、十一年目女性)

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