2024 / 08 / 15

伝統芸能プログラムレポート(2023年度)

★開講式
対象:寺子屋塾生
5月21日 多目的アリーナ
講師:鈴木英一

開講式は、通年クラス(金王丸公演出演)の参加者を対象として開催。開式に先立って長谷部区長より鈴木英一氏へ、伝承ホール寺子屋プロデューサーに任命する委嘱状交付が行われる。区長挨拶の後、鈴木プロデューサーより挨拶、スタッフが紹介される。その後、鈴木プロデューサーに変わって、ボランティアスタッフ(寺子屋サポーター)の古川妹さんより、ガイダンスが行われ閉会。初参加者の衣裳採寸を行い、解散。

★学習プログラム
対象:寺子屋塾生

第1回
6月11日 大練習室

ジュニア「日本語でカブかん」
講師:鈴木英一

日本語の発声方法についての講座。日本の言葉は子音と母音が合体して出来ているが、相手に気持ちを伝えるためには、五つの母音をしっかり発声することが大事。狂言や歌舞伎のセリフを手本に練習を繰り返し、伝統芸能の言葉の使い方を体験学習。

シニア「邦楽鑑賞教室」
講師:堅田喜三代

邦楽囃子の歴史、舞台に於ける役割、使用している楽器の実演と解説。主な楽器は、笛、小鼓、大鼓、締太鼓であるが、講師の職掌は古典から新派までの音楽を担当しているので太鼓系以外にも、銅羅、鉦、オルゴールなどの金属系、更には木魚、木鉦などから擬音笛まで実に幅広い。珍しい楽器がズラリと並べられ紹介されたが、これはほんの一部らしい。芝居の情景描写として役割が大きく、川音、波、雨、雷などの自然音、そして人が歩く音、引き戸の音などの生活音ほか様々な音を使い分けて芝居を支えている。邦楽囃子から芝居や放送の音響効果、そして現代のデジタル音響効果へと発展した歴史なども紹介された。

第2回
6月25日 大練習室

ジュニア「アニメ常磐津」
講師:常磐津文字絵

はじめに、声の響かせ方講座。それから子ども達に古典芸能(常磐津)に親しんでもらうために常磐津の歌舞伎舞踊をアニメ仕立てにした作品の鑑賞。演目は大名、猿遣い、そして猿が登場する「靱猿(うつぼざる)」。鈴木プロデューサー自らが浄瑠璃、常磐津文字絵さんが三味線で伴奏。いわゆる無声映画に音楽をつけて上映する方式で興味津々。日頃、映像に慣れ親しんでいる子どもたちにはとてもよい入門プログラム。

シニア「歌舞伎体験教室」
講師:中村京蔵

中村京蔵さんは国立劇場養成所の研修生から歌舞伎役者になり、今ではカブキ脇役の大多数を占めるキャリアの先駆け的存在。近年では外部演劇への出演、また研究公演的なリサイタル開催への評価も高い。研修所時代の頃から、現在の立場に至るまでのエピソードは、三島由紀夫の「近代能楽集」との出会い、そして演出家・蜷川幸雄の作品への出演など、古典の枠に縛られない自由な活動で、役者として充実した日々を過ごしていることが窺える。後半は、老若様々な女方の所作、そして立役(男役)は侍、町人ほか、身分による所作の使い分けなどを体験。どの所作もとても繊細で、演じることの難しさと修行の確かさの一端を垣間見る。

第3回
7月9日 大練習室

ジュニア「落語」
講師:柳亭こみち 副講師:林家けい木

演目 Aクラス こみち「ん廻し」 けい木「長短」
   Bクラス けい木「つる」  こみち「姫と鴨」
寄席に行ったことのない子どもたちには初めての落語体験。落語には舞台装置等はなく、噺家が一人で語る言葉からストーリーを想像することで成り立つとてもシンプルな芸である故に、却って奥深いものがある。時代背景が異なるため理解できない言葉などもあるようだが、噺家の動作や表情に敏感に反応して笑いが湧き起こる。

シニア「落語」
講師:柳亭こみち 副講師:柳家吉緑

演目 Cクラス 吉緑「金明竹」 こみち「あくび指南」
   Dクラス こみち「ほっとけない娘」 吉緑「刀屋」
初登場の吉緑さんの入門エピソードから、落語界独自のしきたりまで、高座では聞けない話で和んだ後は、Cクラスが骨董屋を舞台にした古典「金明竹」と、滑稽噺「あくび指南」。Dクラスの「ほっとけない娘」は、名所案内を散りばめた新作落語で大笑い。最後は人情噺の名作「刀屋」、悲恋からハッピーエンドに転じるストーリーに一同安堵のため息。真打昇進間近を期待させる吉緑さんの熱演。

第4回
7月23日 大練習室

ジュニア「立ち廻り」
講師:市川新八

歌舞伎の「伎」、いわゆる古典のチャンバラ体験。おもちゃの刀といえども、刃先は尖っているので講師より取り扱いについての諸注意。アニメなどでチャンバラについては知っているようでも刀を持っての体験は初めて。歌舞伎の立ち廻りは激しさよりも美しさに重点があることを学ぶ。今回研修の“立ち廻り”は「山形」「霞」「天地」そして「からうす」の4つの型を組み合わせで構成されているが、初めは戸惑っていた児童も、型を覚えると刀を振り回すことが楽しくなったようで、斬り合いに興じている。

シニア「歌舞伎の魅力」
講師:鈴木英一

出雲阿国に始まる女歌舞伎、これが禁止されると美少年による若衆歌舞伎、若衆歌舞伎もまた禁止されると野郎歌舞伎となり、さらに今日の歌舞伎へ至る道のりは芸能者とお上との戦いの歴史でもあるらしい。お盆、盆踊り、祭りなどとの関わり、芝居として成立するまでの歌舞伎の変遷を学んだ後は声を出しての実践講座。「髪結新三」、「慶安太平記」から決め台詞を役者になった気持ちで朗読。江戸弁の言い回し、文字面通りではない発声がなかなか難しい。

★公開講座「歌舞伎入門」
対象:一般
10月29日 伝承ホール
出演:尾上右近(清元栄寿太夫/浄瑠璃)、清元栄吉(三味線)、堅田喜三代(鳴物)、福原徹秋(笛)
司会・進行:鈴木英一

演目
1. 早稲田大学演劇博物館「河竹黙阿弥展」について
2. 尾上右近と河竹黙阿弥作品
3.「島鵆月白浪」について
4.「島鵆月白浪」ツケ帳
5. 朗読「島鵆月白浪」
6. 黙阿弥劇の七五調台詞ワークショップ

今年は幕末から明治にかけて活躍した歌舞伎作者・河竹黙阿弥没後130年にあたり、早稲田大学演劇博物館の「河竹黙阿弥展」との合同企画として河竹黙阿弥と彼の作品を紹介する講座。前半は演劇博物館館長児玉竜一先生の講演、それから児玉、鈴木、尾上右近三氏による鼎談、「島鵆月白浪」の解説、さらに堅田家に保管されていたツケ帳の紹介など。後半は黙阿弥の『島鵆月白浪』の一部を尾上右近さんが朗読するプログラム。なかなか上演機会のない歌舞伎の演目を朗読という形式で行うことは、役者のみならず観客にとっても得難い体験。客席には右近さんのファンも多く、完売御礼。最後は三本締めでめでたくお開き。

★映像作品撮影
11月2日 料亭・三長

11時スタッフ大和田集合、機材など積み込みを行い12:時に料亭・三長へ撮影チーム現地入り、撮影の準備を行う。13時、鈴木プロデューサー入り、賀古唯義さんによる木造建築の解説と常磐津の演奏を収録。15時過ぎより芸者(瓢屋小糸さん、喜利家鈴子さん)へのインタビューを行う。その後、16時半より1時間程度、寺子屋ジュニア6名と芸者2名による交流会を行い、最後は、料亭・三長三代目、高橋千善さんの協力で、宴会の模様を撮影させていただき、終了。後日(12/17)、浜松町・PLUS音スタジオにて、ナレーションの収録を寺子屋塾生代表2名が行う。

★初春公開講座「歌舞伎の魅力」
対象:一般

第1回「歌舞伎舞踊」
1月12日 学習室1
講師:鈴木英一

古来、六歌仙と称えられてきた歌人達が必ずしも和歌の名人ではなかったという意外な展開からその謎解きへ。「古今和歌集」選者でもあった紀貫之が書いた仮名序には、六歌仙それぞれの寸評があるが、どれもが辛辣なものばかりで、六歌仙とされたことが不思議である。要約すれば怨霊を恐れる日本独特の文化風土にあるらしい。つまりは、皇位継承の争いに敗れた側の者たちの祟りを鎮めるために六歌仙として祭り上げたという説である。そして後世、これらの人物を題材とした芸能が多く生まれ、歌舞伎舞踊にも「六歌仙容彩」「関の扉」などの名作がある。

第2回「江戸歌舞伎」
1月19日 学習室1
講師:古井戸秀夫

敵討物として知られる曽我兄弟をテーマに、曽我兄弟が生きた貴族社会から武家社会へ移行する時代背景、無味乾燥な「歴史書」と、さまざまな要素を取り入れ語り継がれてきた「物語」「軍記物」の違い、「物語」「軍記物」に題材を得て創作された「歌舞伎」を楽しむ江戸の人々の豊から暮らしぶりなど講義は縦横無尽の展開で留まることがない。今回のテーマ「曽我十郎祐成・曽我五郎時致」は「忠臣蔵」「伊賀越」と並ぶ三大仇討ち物で、“若くして非業の死を遂げたことで語り継がれる人”の典型として日本人の心情に深く響いたもので、現代でも歌舞伎の正月公演には欠かせない人気演目。

第3回「上方歌舞伎」
1月26日 学習室1
講師:児玉竜一

“関西は秀吉贔屓”、翻って“江戸嫌い、家康嫌い”、これは今も変わらない上方人の心情。そして江戸は侍の街、上方は商人の街で歌舞伎の演目もまったく質を異にする。秀吉を題材にした演目の多さには驚かされ、そのいくつかは今日でも上演されているというから、いかに秀吉が関西人に愛されているかが分かる。貴重な資料映像もたくさんあり、参加者も食い入るように視聴。秀吉と五右衛門が幼馴染だったという荒唐無稽な設定も歌舞伎ならではの面白さ。いつもながらテキストを見ること無く、澱みなく語る児玉先生の姿はある種の話芸をみるようである。

★映像作品上映会
対象:一般
2月3日 伝承ホール
出演:瓢屋小糸、高橋千善、栂岡圭太郎
司会・進行:鈴木英一

映像作品「継往開来 渋谷の文化 ここに伝わり ここからはじまる」の上映会。鈴木プロデューサーの司会進行で映画に出演された小糸さん、高橋さん、栂岡監督を迎えて撮影秘話トーク。小糸さんは御歳94歳の現役芸者、その矍鑠たる姿、ハリのある声に客席からも驚きの声。映画は昨年11/1に行われた「渋谷金王丸伝説&歌舞伎リーディング」公演の抜粋と11/2料亭・三長にて撮影された映像で構成。三長の木造建築の素晴らしさを賀古唯義さんが語り、寺子屋ジュニアと芸者の小糸さん、鈴子さんとの交流が微笑ましい。「継往開来」とは、これまでのことを継ぎ、未来をひらくこと。文化継承の“いま”を語る物語が完成した。

★公開講座「やしょめ寄席6」
対象:一般
2月3日 伝承ホール
出演:柳亭こみち、柳家小菊、林家つる子、一龍斎貞鏡
司会・進行:鈴木英一

こみち師匠に座長をお願いして今年で6回目、今回は渋谷出身の講談師・貞鏡さんの真打披露を兼ねての公演。公演直前の2/1号区ニュースにて貞鏡さんに表紙を飾っていただいた影響が大きく、当日は完売御礼となる。
初めにつる子さんの「片棒」。一代で身代を築いた自分の葬儀の出し方を3人の息子と相談するケチな父親がテーマ、高座から飛び出しそうな勢いで演じるつる子さんの芸に客席も圧倒される。続いて、こみちさんの登場、枕で今回の出演者を紹介しながら「長屋の花見〜おかみさん編」の一席。古典作品の登場人物をすべて女性に替えて演じられるこみち版花見エピソード、最後は亭主追求の場となり大爆笑。中入り後、貞鏡さんの「真打披露口上」。4人全員が高座にあがり、3人の芸人がそれぞれに貞鏡さんの人となりを述べる。落語講談の口上では本人が口を開くことはないが、4児の母として芸に精進する覚悟を感じた客席からも祝意の大拍手。後半は、初めに粋曲の柳家小菊さんが登場。江戸端唄「梅は咲いたか、桜はまだかいな」など、美しい三味線の音色にのせて歌われる唄の数々が、なんとも粋である。トリはもちろん、貞鏡さんが登場、客席からも“待ってました”の声がかかる。16歳の時に父親の講談を聞いて入門を決意したというエピソードから、真打に至るまでの苦難の日々を明るく力強く語る姿に観客も賛同の拍手。演目は清貧に甘んじる主人に立派な刀を持って欲しいと願う忠義な中間が、刀鍛冶に弟子入り、のちに立派な刀鍛冶となって主人に刀をとどけるという「赤穂義士外伝~忠僕直助(誉の刀鍛冶)」、この演目の登場人物はすべて男なのだが、貞鏡さんの力強く野太い声はなんの違和感も感じさせない見事なものであった。

★修了式
対象:寺子屋塾生
2月4日 多目的アリーナ
講師:鈴木英一

10時開式、はじめに区長挨拶、続いて鈴木プロデューサーの挨拶後、ジュニア代表者へ宮本部長より修了証の授与。続いて、皆勤賞(シニア4名)へ記念品贈呈、そして、参加者全員による景品争奪ジャンケン大会が行われた。最後は、前日に伝承ホールで上映された映画「継往開来」の再上映会。今年も無事に全てのプログラムを終了することができた。

NEWS一覧

2021.02.07 伝承ホール寺子屋 オンライン学習プログラム「やしょめ寄席」公開中(2/7~3/31)
2021.01.01 2020渋谷金王丸伝説公演の動画をアップいたしました。
2020.09.21 「渋谷カブキ音頭」チェックポイント3をアップロードいたしました。
2020.09.16 「渋谷カブキ音頭」チェックポイント1をアップロードいたしました。
2020.09.12 「カブキぼん!ダンス」の振付お手本動画をアップロードいたしました。
2020.09.09 「渋谷カブキ音頭」の振付お手本動画をアップロードいたしました。
2020.09.06 高泉淳子さんと江ノ上陽一さんインタビュー記事をアップロードいたしました。
2020.09.06 伝承ホール寺子屋塾生専用ページができました

 

▲トップページへ戻る

© SHIBUYA CULTURAL CENTER OWADA All rights reserved.