2023 / 06 / 15

伝統芸能プログラムレポート(2022年度)

※講師・出演者敬称略

★開講式
対象:寺子屋塾生
5月22日 多目的アリーナ
講師:鈴木英一

コロナ禍における3年ぶりの開講式。はじめに、プロデューサー委嘱状交付式が行われ、経験者クラスの開式。長谷部健渋谷区長挨拶後、鈴木プロデューサーよりガイダンス、さらにスタッフが紹介されて閉会。その後、初参加者クラスの開式。はじめに宮本部長が挨拶、続いて鈴木プロデューサーの挨拶、ガイダンスを行い終了。

★学習プログラム
対象:寺子屋塾生

第1回
6月5日 大練習室

ジュニア「アニメ常磐津」
講師:常磐津和英太夫、常磐津文字絵

伝統芸能に馴染みの浅い子供たちにとって作品の内容や言葉を理解することは難しいので、ストーリーをこの日のために作成、編集したアニメーションにして投影。それに合わせて常磐津(語り・三味線)が演奏されるアイディア、子どもたちにも馴染みやすい。初参加者クラスは常磐津新曲「小僧と狐」、お寺の小僧といたずら狐のやりとりが楽しく描写。経験者クラスは歌舞伎舞踊の古典作品で、武士・渡辺綱と鬼の対決を描いた「戻橋」をアニメ化、最後は歌舞伎「蜘蛛の糸」や「土蜘蛛」などで使われる蜘蛛の糸の実演をして終了。

シニア「義太夫」
講師:竹本京之助、鶴澤津賀寿

どちらのクラスも「仮名手本忠臣蔵」三段目「裏門の段」をテキストとし、義太夫節の理解、語りの技芸を学ぶ。女流義太夫節は人形浄瑠璃や歌舞伎の舞台で演奏することがなかったため、太夫(語り)と三味線(音楽)だけの形態となり、観客の想像力に訴える深い表現の芸として独自の発展を遂げたこと、白い衣装は、いつ舞台で倒れても良い、との覚悟の現れであることなど1時間では語り尽くせない濃密な内容。

第2回
6月12日 大練習室

ジュニア「日本語でカブこう」
講師:鈴木英一

日本語の発音はほぼ五つの母音からなる。特に古典芸能は母音を伸ばし強調することで、言葉をしっかり伝えるようになっているが、この方法を取り入れることで、自分の言葉をきちんと相手に伝える実戦練習。まず、前回講座の宿題、自分の名前を “ あいうえお ” だけで言ってみる。「すずきえいいち」なら「うういえいいい」。次に狂言「金津地蔵」の小謡を、母音を意識しながら歌う体験。続いて歌舞伎「三人吉三」から、「月もおぼろに、、、こいつぁ春から縁起がいいわえ」の名セリフをパートに分け、大声で唱える体験。最後は「いろは歌」を暗唱しての発表会。

シニア「歌舞伎の身体と表現」
講師:中村京蔵、高泉淳子

中村京蔵が歌舞伎俳優になる研修を行った国立劇場・養成所での厳しい修行時代のエピソード、女方の体型の作り方の実演を披露。高泉淳子からはジャンルは異なっても、型を大切にする演技の基本は同じとの意見が実に興味深い。最後は、突然、老婆に変身した高泉が、マシンガンのような勢いで京蔵に質問攻めを開始、京蔵は無理難題な質問を見事に切り返す。咄嗟の即興劇に参加者は驚き、爆笑。お二人の見事な役者ぶりに感心しきりの講座となる。

第3回
7月3日 大練習室

ジュニア「落語」
講師:柳亭こみち、古今亭始

落語は他の古典芸能のように舞台装置や道具はなく、手拭いと扇子のたった二つだけで様々なことを表現する。早速、想像力テストとして講師が食べる仕草を演じて、児童が答える。続いて高座体験、羽織を羽織って高座に座れば落語家気分で大はしゃぎ。その後、初参加者クラスは始の「牛ほめ」、こみちの「狸の札」で落語を初体験。経験者クラスは始の「元犬」、こみちの「お菊の皿」を鑑賞。

シニア「落語」
講師:柳亭こみち、春風亭一蔵

落語の修行は、弟子入りしたら師匠の家に日参して稽古をつけてもらうことから始まるが、春風亭一門は師匠の家で稽古はつけないので、修行の仕方が異なり、寄席では何かと苦労をしたエピソードや、師匠は絶対的な存在であることなどが面白可笑しく語られて一同爆笑。前半クラスは、一蔵の「夏泥」、こみちの「厩火事」と、酒に呑まれた男をテーマにした二演目を堪能。後半クラスは、断酒をテーマに親子の顛末を描いた一蔵の「親子酒」、こみちの「応挙の幽霊」を鑑賞。

★公開講座「やしょめ寄席5」
対象:一般
10月29日 伝承ホール

恒例となった女性芸人による「やしょめ寄席」。当初は珍しい企画だったが、最近では女性芸人だけによる興行も増えてきた。魁として自負したい。寺子屋ジュニアが「高座返し」と「めくり」のお手伝いをさせていただく。まずは、新作落語を得意とする林家きよ彦の登場。地方の会社の女子会の話から、都会へ憧れる若者たちの人物描写がリアルに描かれ“あこがれ~”の連呼が会場の笑いを誘う。続いて、三増れ紋による「江戸曲独楽」。芸もさることながら、内海好江師匠譲りの話芸はテンポよく、客席は爆笑に包まれる。中入り後は、出演者による座談会。テーマ“ありがたい観客” の話から “ありがたくない観客”の話で盛り上がる。その後、紙切りの林家花が鮮やかな手捌きを披露。トリはこみちによる古典落語「抜け雀」。コロナ禍が少し落ち着き、ようやくホールに笑い声が蘇ってきた。

★古典の日 公開講座「女流義太夫公演 人間国宝 竹本駒之助 鶴澤津賀寿の至芸」
対象:一般
11月1日 伝承ホール

女流義太夫の人間国宝は竹本駒之助のみであったが、鶴澤津賀寿が令和四年秋に人間国宝認定。師弟での認定という稀な慶事となった。その人間国宝のお二人を迎えての女流義太夫初公演。演目は古典の名作「忠臣蔵」の〈三段目〉、事件の発端となった松の廊下での刃傷事件(「喧嘩場」)と、その凶事をよそに逢い引きしていたお軽勘平に滑稽な敵役が絡む段(「裏門」)。この逢瀬が後の悲劇に繋がっていく。駒之助の声が弾み、三味線の力強い音が会場に鳴り響くと、忠臣蔵の名場面が鮮やかに浮かび上がり、誰もが一度は見聞きしたことのある場面ながら、あらたな感動を呼び覚ます。中入り後、〈特別インタビュー〉「女流義太夫 おふたりの人間国宝をお迎えして」の上映、鈴木プロデューサーと津賀寿のトーク、最後は花束贈呈で終演。

★初春公開講座「歌舞伎の名作」
対象:一般

第1回 舞踊の名作
1月13日 学習室1
講師:鈴木英一

お正月にちなんで、江戸の正月の様子と芸能の関わりなどを紹介。歌舞伎界の正月は古代中国の周に倣っているそうで11月を正月とし、現在でも11月に顔見世興行を行うのはその名残。現在の元旦は最も静かな一日で、立春大吉がお正月にあたる等の興味深いお話があって、いよいよ講座開始。歌舞伎の名作「積恋雪関扉」「かさね」を題材に、歌舞伎は他の芸能より「悪」の魅力を追求することをたっぷり1時間半。歌舞伎は善悪表裏一体であるとの奥深さを垣間見る。

第2回 鶴屋南北の名作
1月20日 学習室1
講師:古井戸秀夫

五代目松本幸四郎によって演じられた幻の名作「春商恋山﨑」をテーマに、作者の鶴屋南北の活躍、文化文政期における江戸歌舞伎の隆盛、その時代の風俗と人間描写、さらには後年のパリ万博における川上貞奴の活躍等々、いつもながら歌舞伎研究の泰斗・古井戸の講座は時空を超えて縦横無尽に展開し、あたかもタイムスリップして江戸・明治の迷宮に迷い込んだかのような眩暈すら覚える怒涛の1時間半。「春商恋山崎」は2月14日に、当代松本幸四郎により〈歌舞伎〉リーディング が行われた。

第3回 義太夫狂言の名作
1月27日 学習室1
講師:児玉竜一

今回のテーマである「悪」の定義とは、体制を倒そうとしている者が「悪」であり、現体制を守ろうとするのが「善」とのことだが、虚構と現実の間にこそ真実があるという近松門左衛門の「虚実被膜論」から、浄瑠璃研究の内山美樹子の著作の引用、そして竹本座の座付作者として数々の名作を著した近松半二の「奥州安達原」の紹介と、凄まじいスピードで講座は展開。解説は無論、太夫顔負けの語りで、芝居の情景がありありと浮かぶようであった。

★修了式
対象:寺子屋塾生
2月19日 多目的アリーナ
講師:鈴木英一

新型コロナもようやく規制緩和に向かい、寺子屋塾生全員揃っての修了式を実施。はじめに区長挨拶、続いて鈴木プロデューサーの挨拶後、修了証の授与。続いて、感想文、クイズ正解者へプレゼントの贈呈等。その後は2月14日に伝承ホールで公開された映画「渋谷金王丸伝説〜渋谷のカブキ者〜」の上映会。鈴木プロデューサーより撮影秘話などが紹介され、40分間の映画を堪能して終了。

◎参加した塾生の感想より
○今回も開催されて本当によかったです。(コロナ禍が続いていたので)塾生のみなさんとの練習が楽しみの一つでもあるのでみなさんと一緒に切磋琢磨できるようになるとうれしいです。参加させて頂き、ありがとうございました。

○いつまでも伝統芸能について学び続けたいです

○終了式で鈴木先生、各々グループに違う楽しいコメントをありがとうございます。指導・着付けを手伝って下さったボランティアに感謝!また来年度もよろしく!!!

○この一年も大変お世話になりました!素晴らしい伝承ホール寺子屋の取り組みが世界に知られる機会が増えてうれしいです。十年以上もつづけていただき、深く感謝しています。どうもありがとうございました!

○来年度は、参加者全員で踊りの練習ができるようになりたいです。

○さいしょはむずかしかったです。本番は楽しかったです。

○映画に出られて楽しかったで~す(⌒∇⌒)

○今回は金王丸伝説の解説もあり良かった

○先生方、ボランティアの方々、スタッフの皆様に感謝あるのみです。出来る事なら練習時間がもっと欲しかったです。座学講座も最高でした。又、よろしくお願い致します。

○今年は「映画」ということで稽古も本番も公演も・・・とっても楽しかったです!特に金王神社での撮影はなかなか体験できないことで、また幸四郎さんと踊れた時間は一生の宝物になりました!本公演を家族と観に行きましたが、金王丸の人物像、渋谷の歴史、普段は入れない、見られないもの、お話がふんだんに盛り込まれ、とっても面白かったです。皆さんの踊りも幸四郎さんの踊りも素晴らしかったです。監督の切り取る世界、素敵で熱かったです。歌舞伎リーディングは、大興奮で、歌舞伎にあまりなじみのない父母も、「面白かったー!!」と大喜びでした。解説や幸四郎さん自身の意気込みも聴くことができ、入門としても良かったそうです。

NEWS一覧

2021.02.07 伝承ホール寺子屋 オンライン学習プログラム「やしょめ寄席」公開中(2/7~3/31)
2021.01.01 2020渋谷金王丸伝説公演の動画をアップいたしました。
2020.09.21 「渋谷カブキ音頭」チェックポイント3をアップロードいたしました。
2020.09.16 「渋谷カブキ音頭」チェックポイント1をアップロードいたしました。
2020.09.12 「カブキぼん!ダンス」の振付お手本動画をアップロードいたしました。
2020.09.09 「渋谷カブキ音頭」の振付お手本動画をアップロードいたしました。
2020.09.06 高泉淳子さんと江ノ上陽一さんインタビュー記事をアップロードいたしました。
2020.09.06 伝承ホール寺子屋塾生専用ページができました

 

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